約 1,967,269 件
https://w.atwiki.jp/2mori/pages/16.html
[えぬてぃー] 現実と想像がうやむやな少年。 常に鳥の巣を装備している自衛隊(笑) ――― Q.「そんな装備で大丈夫か?」 A.「大丈夫だ、問題ない」 『髪は逝っている、ここで死ぬ運命だと・・・』 ――― 好きなアーティスト:コブクロ お勧め動画:http //www.youtube.com/watch?v=HZ3L-ETex-U 性格(仮) ケンカ売られてもやられるまでやらないあくまで専守防衛 特技(仮) 弓道 サバイバルゲーム 剣道 ヘアースタイル 鳥の巣 体型 身長178㌢ 体重63㌔ 将来の夢 陸上自衛隊一等陸尉 好きな有名人 反町隆史 好きなファーストフード店 マック 好きなファミレス びっくりドンキー 好きなコンビニ ミニストップ 好きなブランド 迷彩 好きな音楽 STAY 蕾 雪の降らない町 好きなマンガ 鋼の錬金術師 ワンピース 初めて買ったCD B'z 現在のケータイ着信音Advance 得意料理 焼きそば 好きなスポーツ選手 松坂大輔 著書 幸せだったあの日々 やらかした犯罪 強制わいせつ罪 偽証 ストーカー [以下吐き捨てた嘘言] 拷問ごっこしよーぜwww 俺の父さんは三等陸佐でしたよ!!
https://w.atwiki.jp/ratselhappyroute/pages/62.html
キーンコーンカーン 午後の授業が終了し、生徒が一斉に教室を出て行く。 女子「灰塚さーーん!これ、焼却炉まで持って行ってくれない~?」 響く声が、教室の隅まで飛んでくる。 気になるのは、その声に反応する相手の方だった。 主「…………………」 自席から凛々しく立ち上がるリヨさんの姿が、視界にうつる。 ゴミ箱の方へ、颯爽と歩み寄っていく。 そのままゴミ箱の前まで行くと、中を確認し始める。 そして、中に敷いてあるポリ袋を、慣れた手つきで持ち上げた。 無表情はいつもと変わらない。 が、どことなく、不服そうにも見える。 ……気のせいか。 それにしても、この光景を見るのは何度目だろう。 昨日も、同じ場面を見たような気がする。 いつだって、放課後になるとこうなのだ。 必ず誰かに、ゴミ捨てを強いられる。 なぜ彼女に押し付けているのか、至って謎だ。 そして、なにより‥‥ 彼女はなぜ抵抗もせず、ただの言いなりになっているのか‥‥ というのが、最大の疑問かもしれない。‥‥ そんなことをボーっと考えている隙に、横に人がやって来ていた。 暁「ねえ、〇〇くん」 主「‥‥おお」 暁「ふふ。‥‥今、お取り込み中かな」 主「そう見えるか?」 暁「ううん、見えない」 主「なにか用か?」 暁「あのね、ちょっと〇〇くんに、お願いがあるんだ」 主「お願い?」 暁「そう。あのね。委員長のお仕事なんだけど」 主「内容は?」 暁「植物の採集。花瓶に挿すためのね」 主「ふぅん」 暁「手伝ってくれないかな?」 主「……まあそれくらいなら、べつにいいけど」 暁「本当ッ?‥じゃ、行こうッ」 元気よく駆け出して行く。 暁「〇〇くんッ、裏庭で待ってるね!」 そう言うと、一足先に教室から姿を消した。 残されて少しの間、その場に佇む。 大きなポリ袋を目の前にしているリヨさんを見ていた。 大きな袋を、片手に軽々と持ち上げる。 もう片方の手には、焼却炉用の大きなトングを持つ。 辛そうなのが、今にも伝わってくる気がした。 そんなリヨさんは、重い足取りで、教室から出て行こうとする。 主「リ‥」 ひと声掛けようと思ったが、思いとどまる。 今の俺の使命は、暁子ちゃんの後を追うことだ。 そっちに行かなくてはならない。 *************************************** 主「で、どれを取ればいいって?」 暁「うんとね、この青い花と、赤い花を見つけて。取ったら、このバケツに挿してほしいの」 主「わかった」 暁「ありがとう!○○くんは、本当に頼りになるな。じゃ、よろしくね!」 主「ふぅ‥‥やれやれ」 さっそく地面に視線を落とし始める。 静かな裏庭には、俺と暁子ちゃんしか見当たらない…… ‥そう、思っていた。 よって、ふと顔を上げた瞬間、俺は心の中で歓喜した。 そう、二人以外の存在を確認したのである。 影にヒッソリある、焼却炉の前。 スラリと伸びた身長、ブルーの髪の毛、涼しげな表情。 灰塚リヨが、置物のようにして、そこに立っていた。 ゴミ袋にトングを突っ込み、つかんだゴミを、次々と焼却炉の中へ投げ入れる。 その様子は見るからに、面倒くさそう。 たまに袋の中をチラチラ確認しているが、動いているのも視線のみである。 俺は、地面とその様子を交互に見ながら、作業を続ける。 ‥‥と、その時。 暁子ちゃんが、校舎の方に歩いて行く。 どうやら、向こうの方へ取りに行くつもりらしい。 当分、こっちには帰ってきそうにない‥‥かもしれない。 ①作業を続ける ②投げ出す ①作業を続ける ……けど今は、止めた方がいいだろう。 委員長である暁子ちゃんの依頼を、放棄するのはもっての他だ。 ここは一つ我慢して、作業を大人しく続けることにしよう。 というわけで、せめて、様子だけ見守ることにした。 リヨさんは相変わらず、ゴミ袋からゴミを引っ張り上げている。 つかんだゴミは、焼却炉の中へサッと投げ入れる。 モクモクと舞い上がる煙が、少しだけ弱弱しい。 雲になるまでボーっと見入っていると、ふと声を掛けられる。 暁「〇〇くん見て見て!このお花、綺麗じゃないッ?」 主「ん、なんだそれ?」 暁「ホタルブクロ!」 主「へえ。綺麗だな」 暁「ふふッ、これも教室に飾ったら、綺麗かもね??」 主「うん、そうかもな」 暁「よぅしッ、それじゃこのお花、もっと摘んでこようかな!」 主「おう」 暁子ちゃんは、ルンルンでまた向こうへ去っていく。 主「ふぅ、やれやれ‥‥‥」 そしてまた、リヨさんの方を垣間見る。 すると、彼女の方はもう、作業を終えているようだった。 ゴミ袋を小さくまとめ、校舎へと向かい始める。 主「‥‥‥‥‥‥」 追いかけようと思ったが、無理だった。 あまりに歩くのが速い。 しかも、誰も寄せ付けさせないオーラを発していた。 俺はただ、その場に立ち尽くした。 その颯爽と歩き去る後ろ姿を、見つめることしか、できなかった。 ②投げ出す(正解) ‥‥いいや、投げ出してしまおう。 暁子ちゃんには悪いが、俺はそれよりも、行かなくてはならない場所がある。 そう心の中で断言し、俺はそのまま振り切って、焼却炉の方へと向かう。 主「リヨさん!」 リ「‥‥!‥〇〇さん。こんにちは」 主「今日も、ゴミか」 リ「はい」 主「毎日、同じ事やってんの?」 リ「‥‥ええ」 主「嫌気、差さない?」 リ「‥‥さします」 主「だよな……」 リ「ですが‥‥もう、慣れましたので」 主「そうか……」 リ「‥‥‥‥‥‥‥〇〇さん」 主「うん?」 リ「なぜ、こんな所へ」 主「それはだな…」 リ「茨さんの方は、宜しいのですか?」 主「あれ?知ってたのか」 リ「はい。ここから、ずっと見えてましたので」 主「そっか…」 リ「まさか、〇〇さんが来られるとは、思いませんでした」 主「あはは。そう?…俺だって一応他の女の子よりは断然自分の彼女の方が大切なつもりなんだけど」 リ「あ……そう…ですか」 主「‥‥あ、あのさ」 リ「はい?」 主「俺はべつに‥‥自ら、手伝ったわけじゃないからな?暁子ちゃんから、手伝ってほしいって頼まれて‥それで‥‥」 リ「…………」 主「その、つまり‥‥ただの義務だったんだ、義務!」 リ「〇〇さん、一体、何が言いたいんですか?」 主「ああ、いや‥‥とりあえず経緯だけでも、と思って。……ちょっと言い訳がましいか」 リ「……………〇〇さんは、いつもどこか、変わっていますね」 主「えッ、それってどういう?」 リ「エスプリがきいている、とでも言いましょうか。なんとなく、興味の惹かれるところがあります」 主「そ、それは‥‥‥光栄だ」 リ「……………」 主「……それよりさ」 リ「はい」 主「なんで…いつも、ゴミ捨てを断らない?」 リ「それは‥‥美化委員だからです」 主「けどさ、こんなのって異常だろ?」 リ「‥これは、私への使命です。当然の義務なんです」 主「そうは言ってもなあ‥」 リ「……………」 主「辛くないか?」 リ「はい」 主「本当に?」 リ「本当です」 主「そう、か………」 リ「‥‥‥‥‥‥」 リヨさんは手を休めることなく、焼却炉の中へゴミを投げ入れる。 そしてやがて、ゴミが底をつく。 主「お、完了だな」 リ「ええ。終わったようです」 主「じゃ、教室戻るか」 リ「はい。‥‥‥‥‥‥‥‥‥」 すると、リヨさんが驚いたようにして、一瞬立ち止まる。 主「ん、どうした」 リ「あ…………………いえ。……〇〇さんも、教室へ?」 主「おう」 リ「……そうですか」 ‥‥と、その時。 向こうから、声が響いた。 暁「〇〇くーーーーーん!!」 主「あ」 暁「摘んだお花、こっちに持ってきてねえーー」 主「ギクッ」 リ「‥‥何のお花ですか」 主「花瓶に差す花だ」 リ「……なるほど」 主「やべえな。ここらへんに、いい花咲いてないか?」 リ「‥‥〇〇さん、これなんかいかがでしょうか」 主「お?」 リヨさんは、紫色の花を摘んで俺に差し出した。 主「おお、これでいいや。サンキュ」 俺はリヨさんからそれを受け取ると、暁子ちゃんのところへ向った。 主「これでいいか?」 暁「あ、うん!うわぁ、凄く綺麗な花だね」 主「うん」 暁「あ、それってもしかして、ホタルブクロじゃないかな?」 主「ふぅん?」 暁「”正義”………」 主「え‥‥」 暁「それの花言葉。正義っていうんだよ」 主「へえ、そうなんだ」 暁「ねえ、〇〇くん」 主「うん」 暁「〇〇くんの正義‥‥ちょっとだけ、わかった気がするよ」 主「え?」 暁「それじゃあ、私、お花持って、教室行くね」 そう言って、暁子ちゃんはパタパタと去って行った。 主「‥‥‥‥‥」 リ「茨さん、教室に向かわれたんですか?」 主「ああ」 リ「そうですか」 主「‥‥‥‥」 リ「………………」 主「‥‥‥」 リ「……あの」 主「あ、ああ。俺たちも、行くか」 リ「ええ」 主「‥‥あ」 リ「?」 主「花、ありがとな」 リ「‥‥‥‥‥‥‥‥いえ。お役に立てて、光栄です」 主「うん」 ……………………… 正義、か‥‥――――
https://w.atwiki.jp/ratselhappyroute/pages/65.html
【裏庭】 人気のない放課後の裏庭。 一枚の紙切れを握り締め、一人向かう。 紙切れに気付いたのは、ついさっき。 帰宅するため靴を履き替えようと靴箱を開いた時だった。 靴の上に丁寧弐つたつに折られたメモ用紙。 中には彼女のそれと分かる文字で、 『話があるので裏庭で待っています 上城白雪姫』 そんなわけで、現在俺は帰っていく生徒たちの波から一人はぐれてこんなところを歩いているわけである。 それにしても話ってなんなのだろうか…。 わざわざ呼び出して、改まって言うほど大切のことなのか…? 少し緊張しつつ、辺りを見渡せば、木陰のベンチにちょこんと座っている彼女の姿をすぐに確認できた。 主「白雪…!」 白「あ………」 声をかけると、白雪は小走りでこちらへとやってくる。 白「靴箱の手紙…見てくれたんですね…」 主「ああ…それで、話って……?」 白「………………」 主「……白雪?」 白「…白雪と○○くんは…お付き合い……してるんですよね?」 主「ああ…そのつもりだけど………」 白「………………」 主「………………」 白「…………もう、白雪とは……お別れ、してください……」 主「…え?」 白「お別れ……したい、です………」 主「な、何で…!?」 白「………………」 主「理由、とか…!」 白「理由………」 主「そうだろ!?別れたいって言うからには何か理由が…!」 白「…○○くんも、所詮みんなとおなじだったって、こと、です…」 主「それってどう言う…」 白「白雪のこと、何にも分かってくれなかった……」 主「……………」 白「分かってくれると思ってたのに………」 主「分かるって、何をだよ………」 白「…ほら…やっぱり………」 主「そんなの、言われなきゃわかんないだろ…!」 白「…言われなくても、分かることなんて…いっぱいあります………」 主「……………」 白「付き合うって…、そういうことじゃ…ないんですか…?」 主「…それは………」 白「白雪から言いたいことは、これだけですから………それじゃ、」 そう言うと白雪は背中を向けた。 そして、1歩、足を踏み出す。 主「…白雪っ!」 白「…ごめんなさい、さよなら、です………」 主「っ…!」 走り出した白雪を、追うこともせずその場に立ち尽くした。 何故こうなってしまったのだろうか。 彼女の言葉に、俺は一言も反論できなかった。 何にせよ、今この瞬間に彼女と俺の関係は終わったのだ。 それだけは俺にも十分理解できている。 もう、今更後悔したところでどうにもならない。 過去のことなんて、今の俺がどう足掻こうとも変えることは出来ないのだから。 GAMEOVER
https://w.atwiki.jp/ratselhappyroute/pages/98.html
【放課後、廊下】 ある日の放課後。 俺たちは内密にここ、会議室前へと集まった。 衣「ふふ…、全員集まりましたか?」 主「ああ」 驢「めんどくさいんだな~」 リ「時間通りです」 鳥「わっくわく~」 音「ふむ…不穏な空気が漂っておりますわ………」 点呼。 1、2、3、4、5、6人………… 衣「って、多いですよ明らかに多い!そことそことそこ!!あなたがたは呼んでないです!!」 鳥「えぇ~、良いじゃんケチー!」 音「わたくしは鳥越の保護者としてきたまでですわ…。それに付いてきてしまったものは仕方ありませんことよ?」 リ「私は○○さんについて来ただけです」 衣「呼んだのは視察委員だけですってば!それに女子には危険です!!」 リ「…大丈夫です。私はこう見えても幼いころ剣道を習っておりましたので…○○さんを守れる力はあるはずです」 そう言ってどこからか持参した竹刀を見せるリヨさん。 衣「ああ、もうこのバカップルめ!!!!!」 主「いやー…そういわれても、なあ?」 リ「そう言われましても…ねえ?」 衣「キィイイイイイイイ!!!」 どうやらこの前の生徒会室の一見以来、俺とリヨさんの交際はクラス中に知れ渡ってしまったようだ。 ただでさえも良く行動を共にするから噂されていたというのに、あの後手を繋いだまま教室へと戻ったのだから決定打だ。 鳥「まあ良いじゃん良いじゃん!そ・れ・にー、私、あの噂が気になるんだよねー!!」 驢「噂って何なんだな~?」 音「あら、知りませんの?なんでも近頃………幽霊が出るんですって………」 鳥「そうそ!誰もいないはずの校舎で不思議な光がボゥっと………。もう何人も目撃者がいるんだからっ!」 衣「そんな非現実的なものいるわけありませんよ!絶対不審者ですったら不審者です!!」 驢「実は怖いんだな~?」 衣「そ、そんなはずある訳ないじゃないですか!!大体そんなものはこの世には存在しな………」 音「あら、衣縫さん肩に…」 衣「ぎゃあああああああっ!!!」 音「糸くずが………と言おうとしただけですわよ」 衣「お、驚かさないでくださいよぉ!!」 鳥「くひひっ、音古宮ってば幽霊みたいだから~」 音「失礼な。わたくしは占い師であって、決して霊媒師やら幽霊の類じゃありませんことよ?」 鳥「でもさ、そんな怖いんだったら人数いた方が有利じゃん!ってことで私らも付いてくからねっ!」 衣「まったく…仕方ありませんね……」 鳥「よぉし、それじゃ、れっつらごー!」 衣「あなたが仕切んないでくださいっ!!」 ……幸先が思いやられるなあ。 【夜近くの夕方、廊下】 衣「…そろそろ、時間ですね」 この季節は日が沈むのが早い。 6時半過ぎだというのに、もう外は暗くなっていた。 衣「どうやら噂の活動時間帯は暗くなってから…と言うことですから、そろそろ…ですね」 一同に緊張が走る。 驢「もうそろそろ晩御飯の時間なんだな~」 …約一名、緊張感のない者もいるが。 衣「ここから先、動きやすいようにそれぞれ男女のペアで行動しましょう。…まず、僕と音古宮さん」 音「わかりましたわ」 衣「それから鳥越さんと驢馬山」 鳥「よっろしくー!」 驢「…こき使われそうなんだな」 衣「最後に○○さんと灰塚さん」 主「了解」 リ「異論はありません」 それぞれのペアが決定したところで各ペアごとにトランシーバーが配られた。 衣「もし何かあればそれで連絡してください。みんなもすぐに駆けつける用意、よろしくお願いしますね」 主「おう」 リ「お任せください」 音「できるかぎり」 鳥「おっけーい!」 驢「お腹空いたんだなあ…」 鳥「こら!あんたも返事は!!」 驢「…はい、なんだな」 衣「不審者に気付かれてはならないので、電気は付けず懐中電灯でお願いします。何も異常がなかったらまたここで落ち合いましょう。では行ってください!」 こうして波乱万丈な予感のする視察は始まった。 【別校舎、廊下】 俺たちのペアが視察するのは、会議室、生徒会室があり、もっとも幽霊の目撃率が高いと噂の校舎だ。 主「…リヨさん、平気か?」 リ「はい、私のことならお構いなく」 主「…怖いとかは?」 リ「いえ、大丈夫です。○○さんがいてくれますので心強いです」 主「……そっか」 なんとなくだが、「きゃー、こわーい」、ガシッ!!な展開を期待していたんだが…… このリヨさんのことだ、それはないだろう。 …残念と言うか、何と言うか……… リ「それに、もし何かあったら私が○○さんを守りますので…ご心配なく」 ………でもこの竹刀を持ったリヨさんがやけにかっこよく生き生きとしているので良しとするか…。 ……もしかしたら俺よりも凛々しいかもしれない。 主「……………」 リ「…?どうかしましたか?」 主「いや、なんでも……。…もし、リヨさんに何かあれば俺が守るから」 リ「…!はい、有難うございます」 そう言って笑うリヨさんは最高に可愛い。 うむ、男の意地ってのも見せてやらないとな。 ―プツッ…ガー…ガー… と、ここでトランシーバーが鳴り出した。 衣『こちら衣縫、こちら衣縫。そちら、何か変わった様子はありませんか?どうぞ』 主「こちら○○、今のところは特に変わったことはなし。どうぞ」 衣『了解。驢馬山の方も特に変化はないそうです。何かあればすぐに連絡してください、それでは。………プツッ』 こちらも一階、二階の見回りは大体終わっている。 残りは三階だけだ。 主「この様子じゃ今日は何も起こりそうにないな」 リ「そうですね」 そう言いつつ三階へと上がる階段に足をかけた。 その時…… リ「…あ……」 主「どうかしたか?」 リ「あ、いえ…いま、何やら背後の方で気配を感じたような気がして……」 主「え、それって………」 リ「気がしただけですので……気の所為かもしれません」 主「いや、この際だから確認しとこう」 今登っている階段を引き返す。 降りたそこは暗い闇へと繋がる廊下が広がっている。 主「く、暗いな…」 リ「ええ…確かめに行きましょう」 主「…ああ」 暗い廊下をカツカツと二人分の足音が通っていく。 その時、 スッ……… 前方、さっき俺たちが登っていたのは逆方向の階段を横切る小さな光が見えた。 主「リヨさん…あれ……」 リ「ええ、○○さん………」 リヨさんは何処か戦闘体勢を取っており、今にも走り出しそうな雰囲気を醸し出している。 主「ちょ、ちょっと待って、今衣縫たちに連絡を………」 ―キャアアアアアアアアアアアアアアアアッ その瞬間、絹を裂くような女性の悲鳴が聞こえる。 主「な…」 リ「!?」 主「あ、リヨさん…!!」 それと同時に悲鳴の聞こえた方向へと走り出すリヨさん。 あっと言う間に闇に解けて見えなくなる。 主「くそっ…!」 俺も急いでその後を追いかける。 ―プツッ…ガー…ガー… 主「衣縫!衣縫!!」 衣「はい、どうかしましたか?」 主「今、光と、悲鳴が…!!」 衣「ちょ、ちょっと落ち着いてください!!」 主「俺らが見回ってた校舎、3階!!今、リヨさんが一人で駆けつけて…!!」 衣「分かりました、我々もすぐ行きます!!!」 ―プツッ… 衣縫に連絡しつつ階段を一段飛ばしで登る。 主「…っはあ…はあ………」 三階についても周りは闇。 先が見えない。 もちろん、リヨさんがどこにいるのかすら……… 主「リヨ…、リヨさん…!!」 呼んでみても返事はない。 主「そうだ、電気…!!」 思い出し、急いで電気を付けに行く。 一気に明るくなる廊下。 ―ガシャン!! 主「!!」 その瞬間何やら物音。 その音は…どうやら生徒会室からだ。 急いで生徒会室へと駆けて行く。 ―ガラッ!! リ「あ…○○さん……」 主「リヨさん、無事だったのか……」 とりあえず彼女の無事に安堵する。 丁度ドアの横に合った電気を付け、その中を見渡した。 主「あ…え…?」 リヨさんだけかと思っていた室内。 だけどそこにいたのは彼女だけではなかった。 主「生徒会長……と………」 部屋の隅でペタンと座り込んでいる会長。 そして、その前に失神…?としあえず、寝そべっている男。 ……リヨさんが竹刀でやったのか…? でもこの男…見覚えが……… バタバタバタ……… と、廊下から大勢の足音。 鳥「きゃー、事件よ事件よぉ!!」 驢「ひぃ…ひぃ…待ってなんだな~」 音「何やら大変なことが起こっていると占いに出ていますわ!!」 衣「○○くん無事で………って、先輩ぃぃいい!?」 主「……あ、そっか」 そう、この伸びている男、衣縫や驢馬山の先輩でもあり生徒会の副会長でもある男だ。 衣「一体、何が起こったんですか…」 …………… ………… ……… 衣「えぇ~~~~!?先輩が幽霊騒動の犯人んんんんん!???」 衣縫の声が部屋中…いや、校舎中に木霊する。 副「…スマン!本当に悪かった…反省している………」 鳥「ちぇーっ、幽霊じゃなかったのか…つまんないのー……」 音「鳥越…こんな時に不謹慎ですわ」 驢「僕はこいつが怪しいんじゃないかと睨んでたんだな~」 音「…驢馬山、あなたもです」 鳥「でもさ、でもさ!なんでこんなことしたわけ?」 副「…………………」 衣「先輩、何か言ってくださいよう!何か理由があってのことですよね!?ね!?」 副「……俺は…」 姉「副会長は、これが欲しかったんですよね…違いまして?」 そこで初めて会長が口を開く。 鳥「きゃー!会長っ!!」 音「あなたは少しお黙りなさいな」 主「それは…?」 姉「旧校舎の権利書です」 衣「旧校舎って言うと………あの、今第二グラウンド拡大計画のことで揉めてる…?」 姉「そうですわよね、副会長?」 副「…ああ」 衣「でもどうして副会長がそれを………」 副「………旧校舎を、潰されたくなかったんだ…」 衣「でも、グラウンドが拡大するんですよ?そうなれば僕たち野球部だって練習場所が広くなって…!」 副「…それでも、あの旧校舎には………」 衣「それに旧校舎が使われていたのはもう一昔も前のことでしょう?どうして先輩が………」 副「………俺の親父がな、ここの卒業生なんだ」 衣「え…?」 副「この高校に入る前…親父は俺にいろいろと話してくれたよ。この学校について…ちょうど、親父が学生のころに旧校舎は使われていてな…、本当に嬉しそうに話すんだ、当時のこと。………それで、俺は親父と同じこの高校に入ろうと思って……、あの旧校舎は…俺がこの学校に入ろうと思ったキッカケだったんだ………」 衣「それで旧校舎を…?」 副「ああ…。親父も悲しそうな顔してたよ、この旧校舎が潰されるかも知れないって話聞いて……、だから………!」 姉「…いくら理由があろうと、ここへ忍び込んで盗もうとした罰……それが許されるわけではありませんわ」 衣「会長…!」 副「…それは、覚悟しています」 鳥「きゃー、会長!カッコイイ!!!………はれ、でもどして会長がここにいるのー?」 姉「…オホン、そのことについては別によろしいですわ」 リ「………お姉さまは、その権利書を守るためにここにいたんです」 姉「リヨ…!!」 リ「お姉さまは、その権利書が狙われていることに勘付いて………。厳しいところもありますが、自分で決めたこと、自分の仕事などはきっちりとこなす…お姉さまは、そんな人ですので……」 鳥「さっすが会長!素敵!!!」 姉「………それでも、結果的にはリヨに守ってもらうことになってしまったんですもの…、わけないですわ」 鳥「え!?何々!!?ってことは副会長って会長を襲おうとしたわけ!?」 副「い、いや…俺は断じてそんなことは…!!!」 音「…不潔」 衣「先輩がそんな人だったなんて…!!」 驢「僕はもともとそんな奴だと思ってたんだな~」 副「ち、違うんだ!!…その、な…会長がいるなんて思わなかったし…真っ暗で……幽霊の噂もあったわけだから……」 リ「幽霊と勘違いしたわけですか」 主「…て言うか、多分幽霊騒動の原因って副会長ですよ」 副「何!?」 主「何度か夜に忍び込みませんでしたか?」 副「ああ、偵察に………」 主「それです」 副「……………」 衣「先輩、意外と間抜けなんですね」 姉「オホン、先ほどの話から逸れていませんこと?」 驢「何の話だったんだな~」 姉「副会長の処分についてです」 衣「会長!どうか今回は大目に…」 姉「規則は規則です」 衣「……………」 副「良いんだ、衣縫…すまない………」 鳥「ちょっと可哀相な気もするねー…」 音「仕方ありませんわ」 副「……………」 姉「副会長、あなたは副会長の座から外します。今後一切生徒会の仕事には係わらず、即野球部にお戻りなさい」 副「え…?」 衣「それじゃあ……!!」 副「あ、あの会長…先生の方に連絡とかは…」 姉「……今回は未遂、と言うことで大目に見ます。未遂で終わらせてくれたこの子達に感謝なさいな」 衣「先輩!また一緒に野球できるんですね!!」 副「あ…ああ…!」 驢「ちぇー…またしごかれるんだな~…」 鳥「うっふふ、やっぱ会長良いわ~………あ!でもこの副会長倒したのって灰塚さんなんだよね!きゃーん、姉妹揃って素敵かもっ!!なーんで気付かなかったんだろっ!!」 音「もう“元”副会長ですわよ、このミーハー娘」 主「…何だかんだで無事に終わって良かったな」 リ「そう、ですね…」 主「でも今度から一人で無茶なことはするなよ?これでも凄く心配したんだぜ…」 リ「あ、すいません……その、つい…夢中になってしまいまして………」 主「ははっ、次からは気をつけろよ?」 リ「はい…」 主「それにしても会長ってすげーな…俺、今なら何でこんなに会長が人気あるのか…分かる気がする」 リ「…そうですね。私も……憧れたことがある人ですから………」 こうして俺たちの長い夜は幕を閉じたのであった。
https://w.atwiki.jp/ratselhappyroute/pages/72.html
【休み時間、教室】 暁「……~~~、それでねー、」 鳥「えぇ、うっそマジでー!?」 暁「ホントよー。ね、ちさ菜?」 あ、まただ…… 視界の隅に映る。 白「あ、あの、○○くん…!」 こんなの……… 気にしない。 気にしない。 気にしない。 何度自分で言い聞かせる。 …でも やっぱり、気にせずにはいられない。 暁「…菜?ちさ菜!!」 ち「え、あ………」 暁「どうしたの?ボーっとして…」 鳥「ちさ菜らしくないなー、もう!」 暁「あ…もしかして気分でも悪い?」 ち「………いや…何でもないんだ、だいじょぶ」 暁「…ホントに?」 ち「うん、ホントホント…」 鳥「あははっ、そりゃそうでしょー!なんたってちさ菜は元気が取得みたいなもんじゃない!」 ち「ははっ、やっぱだよねー?…はははっ……」 暁「そう?」 ち「うん、そうそう」 暁「なら、良いんだけど……」 ち「…あ、あたしちょっとトイレ!」 逃げ出すように教室を後にした。 【休み時間、女子トイレ内】 最近、何故か無性にイライラする。 いや、何故かとかじゃない。 原因は分かってるから。 ち「…はあ」 …ダメ、だな。 そんな風に思っちゃ。 あたしは、違うから。 あんな人たちとは違うから。 汚い感情を表に出したくない。 心にしまっておけば良いんだ。 ずっと笑って。 笑顔で。 いつも通りのあたしでいなきゃ。 そうすれば、ずっとこのままでいられるんだから。 ずっとこのままの幸せな毎日で……… ち「………よっし」 顔を上げる。 ち「……………にーっ」 鏡に向かって笑顔を作る。 ち「あははっ、あたしってやっぱ可愛いじゃん!」 うん、大丈夫。 大丈夫だ。 ○○の一番近くにいるのはあたし。 あの子じゃなくてあたし。 あたしなんだから。 ち「あははははははっ………はあ」 ダメだ、溜め息なんかついちゃ。 幸せが逃げちゃう。 …神様が見てる。 白「…………」 ち「あ………」 ふと、鏡の隅に映ったあの子。 そのまま鏡越しに目が合う。 白「……………」 目が合ったのは一瞬。 そのまま彼女は目を逸らし、何事もなかったかのように個室の中へと向かっていく。 それが余計にあたしを苛立たせる。 ち「…あのさ、」 気がつくと呼び止めていた。 白「…なんですか?」 ち「用ってほどのことじゃないんだけどさー……」 白「……こうやって、お話しするのは久しぶりですね」 ち「……そうだね。…………」 白「……………」 ち「…ところでさ、上城さん、」 白「はい?」 ち「最近、よく○○のところにくるよね?」 白「…それが、どうしたんですか?」 ち「いや、どうしたってほどでもないんだけどー…」 白「じゃあ…どうでも良いじゃないですか…」 ち「…そうだね。……でもさ、休み時間のたびにってのは、ちょーっと迷惑なんじゃない?」 白「迷惑…ですか?」 ち「○○だっていろいろ用事があるだろうし…」 白「でも、○○くんは来て良いって言ってくれましたよ?」 ち「え?」 白「いつでも遊びにおいでって」 ち「あ…そ、そんなの、社交辞令に決まってんじゃん!本気にしちゃってさー…」 白「どうして…」 ち「ん?」 白「どうして社交辞令って分かるんですか?」 ち「それは…だって、普通そうじゃん!○○って優しいから、断りにくいだろうし…」 白「だろうし…?」 ち「それに……○○はあたしの彼氏なんだよ?あたしと付き合ってるの!!」 白「…でも、彼女だからと言って○○さんの交友関係全てに口を挟んで良いものなんでしょうか?」 ち「それでも、あたしは○○にあんたよりも愛されてるの!それぐらい分かるでしょ!?」 白「垂髪さんは垂髪さんであって、○○くんじゃないですよね?」 ち「な、何言ってるの?」 白「○○くんの気持ちなんて、そんなの他人のあなたに分かるわけないじゃないですか」 ち「は…はあ?」 白「○○くんの気持ちが分かる人なんて…○○くん本人だけですよ?」 ち「……………」 白「彼女だからと言って…何か誤解してませんか?」 ち「あた…、あたしは………」 白「失礼します」 閉じられる個室のドア。 ち「お、おかしいよ、あんた…」 呟いた言葉はただ響いただけ。 その言葉に対する返事は返ってこない。 反響したそれが自分へと返ってくるだけ。 ち「っ…………」 鏡の中の自分と目が合った。 ああ、違う。 今のは、…違う。 笑顔。笑顔。笑顔。 ほら、笑わなきゃ… 【回想、ここは背景全体が真っ暗でも良いかなと思います】 あたしは、いらない子なの? 義母「お前に生きる資格なんてないんだよ」 今日もまた、耳をふさぎたくなるような現実。 振り下ろされる拳。 ち「やだ…もう、やだよぅ…やめて………お義父、さん……お義母さん」 義母「親だなんて言わないでちょうだい、おぞましい…!」 義父「まったく、親が親なら子供も子供だ…蛙の子は蛙とはよく言ったものだな」 どんなに叫んでも聞き入れてはもらえない。 蔑んで見下して、嘲笑って中傷。 ち「助けて…」 白「……………」 ち「…ねえ……助けてよ………」 白「……………」 伸ばした腕は宙を切るばかり。 いつだってそう。 誰も、助けてなんてくれない。 逃げ出さなきゃ。 ここから。 早く。
https://w.atwiki.jp/ratselhappyroute/pages/27.html
★垂髪 ちさ菜 誕生日:8月7日 血液型:A 身長/体重:165/49 出生時の身元は不明。が、一人っ子なのは確実である。 幼少時に両親が犯罪(集団強盗、及び殺人)を犯し、ちさ菜は自然と児童養護施設に預けられる。 しかし相当やんちゃな子供だったために、施設の手には負えなくなり、結局、養子として養親に引き取られていく。 両親の事情を何も知らないまま養親の元へ連れてこられるが、※1を受け知らされることになる。 そのことから、自分は他の人間とは違う、と意識するようになる。 後に、白雪姫も養子としてもらわれてやってくる。が、今一肌が合わずあまり関係は持とうとはしない。 しかし※2のようなことから、白雪姫に対して恨みを持つようになる。 また同時に、世の中には強い者と弱い者がいるのだという認識をするようになる。 そのようにしながらも※のような少女に成長していく。 ※----------------------------------------------------------------------- 極度の寂しがりや。 一人になることを極端に恐れ、常に誰か(あるいは何か)にすがろう、頼ろうとする。 人に、自分という存在が忘れられることをいつも恐れている。 ↑これを回避したいがために、人前では目立ちたがる傾向がある。 単純で、他人から影響を受けやすいタイプ。 他人の前では、常に明るさと元気と笑顔を絶やさないよう心がける(憂さ晴らしとして)。 和を乱すことを嫌うため、自分の意見を押し通すようなことはない。 常に場の雰囲気というのを優先し、発言もそれなりに気を使う。が、遠慮はできない。 曲がった事は黙って見過ごせないタチで、そういう場面にはどうしても首を突っ込んでいってしまう。 そういったことから、リーダーシップを自然と取っていることが多い。 自分のことを哀れで惨めな人間だと思い込んでおり、それに対して理不尽さを感じている。 また、自分を弱い人間だと決め付けているため、無意識の内に周囲に対して警戒をしている面もある。 ↑ちさ菜の中でいう強い人物とは、自分を責め立てるような人物のことである。 そういう者に対しては、距離を置こうとするか、あるいは味方に協力をあおいだりする。 基本的に難しいことを考えるのは苦手とするので、勢いだけでとりあえずやる、というのがモットー。 空回りすることもしばしばだが、失敗をしても落ち込んだりはせず、いつも前向きに考えようとする。 ↑(ちさ菜にとって)プラス思考を持つということは、試練でもあり同時に生き甲斐でもある(無意識の内に褒美や見返りを期待している)。 嬉しいことがあったり幸せだと感じる瞬間に出くわしたりすると、そのつど、それが無上の幸せだと感じる。 ↑素直に喜ぶ反面、自惚れる自分に恐怖を覚えるので、できるだけ冷静さを保とうとする。 ↑幸せには持続性がないこと、また、自惚れの先には虚無感しか残らないということを心得ている。 それでも、また新たに幸せを求めようとする(幸せ依存症ともいえるだろうか)。 金、食べ物、人間など、欲しいと思ったものにはとことん突っ走って手に入れようとする。 手に入れるためならば、ドンと来い!の情熱家であり、また努力家でもある。 貪欲ではあるが、決して我がままではない。 結果が無理だと分かったならば、素直にそれを受け止め、スッパリ諦めるような潔さも持ち合わせる。 ↑しかしこういう場合は益々自分を惨めに思い、落ち込んでゆくリスクを背負うことになる。 尚、”神”の存在を信じており、何にでも”神”にこじつける癖がある。 幸せというのは自分でつかみにいくもので、舞い込んでくるものではないと思い込んでいる(よって、運命などというのは信じていない)。 実親のことは憎んでいる(自分をこんな境地に追いやったことに対して)。 ※3を受け、この頃から次第に、異性について意識をするようになる。 そして※3の一年後(つまり3年前)から、一人暮らしを始める。 この一人暮らしの経験から、自分にとって価値のある物は何なのか? また、自分にとって本当の幸せというのは一体何なのか? これらの答えを見出すことによって初めて、”自分の生きている意味”を証明できるのではないか? などを考えるようになる。 そうして、それらを探す決心をする。 ↑養親へのあてつけを試みようとしている風にもとれるが、 これはあくまで自分のためである。 ※1<<4年前:育った環境、羽生治との関係>> 養親からの虐待を受ける。 「おまえは犯罪者の娘だから、生きる資格はない」 「おまえは、生きていても意味がない」などと言われる。※注 その環境から逃げるため、できるだけ外に行くようになる。 一人で宝物探しなどして遊んでいたが、そんな時、羽生治と出会う。 羽生治含む男子グループの中に自然と溶け込んでいく。 羽生治はよき相談役として仲良くしてくれる。後に親友まで発展する。 ※注 養親は、養護施設から支給される多額の金を目的としてちさ菜を引き取った。 よってちさ菜への愛は皆無である。 世間体を気にするタイプなので、犯罪者の娘が自分の家にいるという事実に嫌気がさしていた。 ※2<<4年前:白雪姫>> 虐待を受ける側ら、白雪姫は冷静に自分を眺めていた。 助けを求めるが、白雪はいつも見て見ぬふりをして去って行った。 ※3<<4年前:家出>> 環境の苦痛に耐えかね、とうとう家を飛び出す。 羽生治にかくまってもらう。 ちなみにこの時のちさ菜は恋の存在を知らなかったので、 羽生治に特別な感情を抱いたりはしていない。よって恋仲に発展することもなかった。
https://w.atwiki.jp/ratselhappyroute/pages/74.html
【教室、休み時間】 あの日以来、垂髪は学校へは来ていない。 それと同時に俺は、もう全てが面倒くさく思えてきた。 何をしていても、楽しくもない。 意欲が、わかない。 机に突っ伏して目を閉じた。 がやがやと周りの雑音が聞こえる。 鳥「…ねえねえ、なんで最近ちさ菜学校来ないんだろーねー?」 その中でふと聞こえた名前。 自然とその会話を耳が拾う。 音「そう言えばそうですわね」 暁「うーん…もしかしたら体調不良かもしれないね…」 鳥「えぇー!?ちさ菜に限って!!?」 暁「ああ見えて…結構苦労してると思うの、あの子」 鳥「あ、そう言えばバイトとかすっごい頑張ってるよね!」 音「いろんな部活動の助っ人やらも………身体を使うことばかりですわね」 鳥「うーん…それじゃあ疲れが溜まってても仕方ないのかなあ…?」 暁「うん、それに一人暮らしでしょ?やっぱり、いろいろ大変だと思うの…」 鳥「そっかあ…」 暁「心配だね……」 音「……気になりますわね」 鳥「そうだねー…」 音「なんでしたらわたくし、占いますわよ?」 暁「うーん…占いかあ………」 鳥「あ、て言うか占いよりも確実な方法があるじゃん!」 暁「え?」 音「む…わたくしの占いよりも確実だと申しますの?」 鳥「ふっふっふっ………おーい、○○ー!!」 大声で俺を呼ぶ。 …正直うるさい。 鳥「…ありゃ、○○寝てるの?」 主「……………」 鳥「ねえ、ねえってば!」 主「……起きてるよ」 できればこのまま寝たふりを続けたかったけど、こいつの性格上そうするともっとうるさくなりそうだ。 渋々顔を上げてやる。 鳥「なーんだ、起きてたのか」 主「まあな」 鳥「もう、起きてたんならもっとちゃんと返事してよね!」 主「…で、何だよ……何か用か?」 鳥「あ、うん。用って程じゃないんだけどさー…最近ちさ菜学校休んでるよね?」 主「……そうだな」 鳥「何で休んでるのか知らない?」 主「知らない」 鳥「む、○○冷たーい!!」 主「…って言うか、俺に聞くなよな」 鳥「だって○○ちさ菜の彼氏じゃん!」 彼氏。 その言葉が胸にズキンと響いた。 主「…俺は、本当に何も聞いてないから」 鳥「ふーん…そう?」 主「ああ」 鳥「なんか変なのー」 諦めたのか去っていく鳥越。 音「……だからわたくしが占って差し上げるって言いましたのに」 鳥「お、そだね!じゃあ占ってよー!!」 俺の気持ちを他所にまた騒ぎ出す女子達。 そうだ、何も聞いてない。 知るわけが無い。 俺は、あの日あいつと別れてから会っていないんだから。 【別の休み時間、教室】 羽「なぁ…」 主「んー?」 羽「お前…垂髪と何か、あったのか?」 その名前に一瞬、体が強張る。 ……また、か。 もういい加減うんざりだ。 だから何でみんな俺に聞くのか。 俺は何も知らない。 あいつのことなんて何も分からないのに。 主「…なんで?」 羽「…なんとなく」 主「なにもないよ」 羽「ホントに?」 主「何で嘘吐く必要があんの?」 羽「そりゃそうなんだけどさ」 何もなかった。 それでいい。 もうそれでいいじゃないか。 主「別に、何もない」 羽「わかったって」 主「なのに、来ない」 羽「そうだな」 主「……………」 羽「お前は…気にならないのか?」 主「………別に」 羽「…理由、聞きにいけば?見舞い、とかさ」 主「いや………」 羽「…なんで?」 主「…………もう、いいから」 終わらせたんだ。 白紙に戻った。 何もなかった。 もう、これ以上は、いい。 羽「もういいって…聞く事が?」 主「……………」 羽「それとも………」 全てを見透かしたような羽生治の言葉。 主「……………」 何も答えられない。 羽「…いや、いいわ。それじゃな」 去っていく羽生治。 もう、いい。 全部、もういい。 呆れたから? 愛想を尽かしたから? …それ以前に、俺はもう諦めたんだ。 あいつが、寂しがり屋なのは十分分かってた。 だからこそ、俺は必要とされたのかもしれない。 それでも俺は嬉しかった。 本気で、好きだったから。 好きでいてくれていると思っていたから。 なのにどうして垂髪は俺を避ける あの家を出て行っても、俺はまた垂髪が呼び戻してくれるのを心のどこかで待っていたのかもしれない。 俺が諦めた? いいや、諦められたのは俺の方か。 あの日、あの家を出た日、手を伸ばそうとすれば叶う距離だった。 でもあいつは俺をただ見送った。 俺はひたすら背を向けた。 ただそれだけ。 あの日は何もなかったんだ。 もしかしたらただの衝動で、俺は本気で出て行く気はなかったんじゃないかと今ではそう思う。 ただそれであいつが悔いてくれれば良かった。 それでもっともっと俺の事を求めてくれれば良かったのに。 それでも、今はもう叶わない。 もう、あいつのことなんて、俺には関係ない。 【上とは別の日の休み時間、教室】 あれから何日たってもあいつはまだ来ない。 ぽっかりと開いたままの隣の席。 気付けば、俺は一人になっていたのかもしれない。 あいつのせいで二人でいることに慣れてしまった。 その所為か、一人の時間に滅法弱くなったように思う。 難しいこと、考えなくても良いことをぐるぐると考えてしまう。 白「○○くん!」 主「お、白雪か」 それでも休み時間のたびに話しかけてくれる白雪のお陰で幾分かは楽だ。 その間は何も考えなくて良い。 ただただ他愛の無い話を繰り返す。 白「…そういえば、垂髪さん、最近学校に来ませんね」 主「…ああ、そうだな」 もう何人に聞かれただろう。 初めの方こそイライラとしていたものだが、もう聞き流すことすら出来るようになった。 慣れというのは気持ちをも麻痺させるんだろうか。 白「…○○くん?」 主「ん?」 白「……………」 主「どうした?」 白「あの…、その…………」 心配そうな瞳。 ああ、そう言えば白雪は被害者だったっけ。 主「…ああ……もう、大丈夫だから」 白「大丈夫…?」 主「白雪は……何も責められることは無い」 白「それって…」 主「もう、その原因はなくなったから」 彼女には、多少の聞く権利はあるだろう。 だから、喋る。 少しだけ。 白「○○くんと、垂髪さんは………」 主「ん?」 白「お付き合い…、してますよね?」 主「……………」 白「○○さん…?」 主「あ、いや………」 俺と、垂髪は……… ①もう関係ない ②……………。(正解) ① 主「………もう、何でもないよ」 関係ないんだ。 もう俺には…あいつのことは。 白「そう、なんですか…私……」 主「……別に白雪が気にすることでもないし、大丈夫…」 白「…あ…………」 主「…どっちみち、こうなったと思うし」 ………そう、あのままの関係では。 白「……………」 ※へ ②……………。 主「……………」 答え、られない… 言葉が喉につっかかたように出てこない。 白「あ、あの…白雪、何か悪いことでも……」 主「…いや、違うんだ…」 白「…そう、ですか……?」 主「ああ………。こっちの、問題だから…」 そう、もう白雪には関係はない。 これは…俺と垂髪の問題だ。 二人の問題のはずなのに…何も解決は出来なかった。 ただ、お互いに距離を置いただけ。 何の解決にもなってはいない。 それは、分かっている。 でも、どうして良いか分からないんだ……。 俺は…ただ待っているのかもしれない。 時間が解決してくれるのを。 でも本当に…時間は解決してくれるのだろうか? ※へ ※ ―キーンコーンカーン 白「あ…チャイムですね…」 主「…ああ」 白「それじゃ、白雪は席に戻るので…」 主「おう」 ……あいつとは、初めからもっとお互い理解しあうべきだった。 今ではそう思う。 ………いくら思ったところで、もう既に手遅れなのは分かっているけれど。 結局、ただの肩書きだけの恋人なんて、何の意味もなかったんだ。 【教室の隅】 白「あの、鉄野さん…」 羽「ん?」 白「ちょっと、お話が…」 羽「……これまた珍しい客だな」 白「ええ…………」
https://w.atwiki.jp/ratselhappyroute/pages/92.html
【裏庭、放課後】 放課後。 オレンジ色の西日が照らす校舎。 生徒達はそれぞれ帰宅したり部活動に励んだりと、校舎に残っているものは少ない。 …そろそろ、良いか。 俺はベンチから鞄を持つと立ち上がる。 もう、多分教室には誰もいないはずだ。 ……彼女…暁子以外は。 彼女は今日は委員長の仕事で残っているのは知っている。 俺は教室へと向かった。 【教室】 微かに開かれた扉の隙間から教室内を見やる。 ………やっぱり、いた。 一人でせっせとプリントを閉じ、小冊子を作っている。 ……何となく卑怯な気もするが、何故か最近彼女には避けられている。 正攻法で行ってもきっとまた逃げられるだけだ。 だから、多少卑怯でもこの方法で良いんだ。 何とも言い訳がましいが、自分にそう言い聞かせる。 狭い扉の隙間に手をかけ、大きく開いた。 ―ガラッ 暁「!!………あ…」 主「…よう………」 何とも気まずそうな表情の彼女。 暁「○○くん………帰ったんじゃなかったの……?」 主「あ…いや………、ちょっと忘れ物してさ」 もちろんそんなの真っ赤な大嘘だ。 暁「あ、そうなんだ…」 こちらを見ようとしない。 主「……それ、手伝うよ」 暁「あ、ううん!良いの、私の仕事だから…」 主「でも、二人でやった方が早いだろ?」 暁「……………」 半ば無理やり向かいの席へと腰掛ける。 一番端っこに置かれたプリントの束から一枚取った。 主「これ1ページ目?」 暁「あ、うん……並んでる順番に閉じて言ってくれれば良いから…」 主「了解」 とりあえず、と作業に取り掛かる。 沈黙が続く。 紙の刷れる音、ホッチキスの音がやけに大きく感じる。 校庭からは正反対に元気の良い掛け声が微かに聞こえていた。 主「……………」 暁「……………」 主「……なぁ、」 暁「え?」 主「ちょっと…さ、話があるんだけど………」 その途端、ビクリと震える彼女の肩。 強張った表情。 暁「話って………」 主「あのさ、」 暁「やだっ!」 突如声を荒げる暁子。 その声は悲鳴にも似ている。 主「暁…」 暁「やだ、聞きたくない…」 主「暁子!」 暁「やだ、っもう、やだ…!!わた…、きょ、こ…やっと……」 主「どうしたんだよ…!」 暁「…っく、ひっく……」 主「ほら………」 暁「ふぇ、ふぇええええん…!」 ついに彼女は泣き出してしまった。 声を上げて、まるで子供のように。 主「暁子…、落ち着けって…」 暁「……っく、ひっく…」 主「…な?」 突如泣き出した彼女に少しうろたえながらも、出来るだけ優しく声をかけてやる。 手を伸ばし、抱え込むようにして背を撫でてやる。 小さくて細い身体。 それを労わる様に、ゆっくり、ゆっくりと……… ……………… …………… ………… 暁「………ぐすっ、」 主「落ち着いたか?」 暁「…………(コクリ)」 無言のまま頷いて肯定する。 主「……どうしたんだよ、一体…」 暁「ごめ、ごめんね………」 主「うん、もう良いから………」 暁「……………」 主「……俺が話があるって言ったのは…聞きたかったのはさ、どうして最近俺を避けているのかってこと」 暁「……………」 主「理由があればちゃんと聞くから…な?」 暁「だっ…て……そ、れは…」 主「ん?」 暁「…だって……○○くん…もう、私のことなんて……嫌いになっちゃったでしょ…?」 主「え?」 暁「幻滅…しちゃったでしょ……?」 主「なんでそうなるんだよ?」 暁「あの日……」 主「あの日?」 暁「あの打ち上げがあった後……聞いたんでしょ?上城さんから………」 主「……………」 暁「私、嘘言ったよ?友達、ずっと仲間外れにしてたよ?」 主「…でも、それにもちゃんと理由があるんだよな?」 暁「…理由?そんなの…ないよ、ただ…私のためだもん………私が、会いたくなかっただけ、だって、また…………」 主「…暁子……」 暁「…もう、いいよ……私がいけなかったんだよ、○○くんに甘えすぎてた………。本当にも求められてる私はこんなのじゃだめなの……甘えてちゃ…」 主「……………」 暁「○○くんだって……こんな私よりも…上城さんの方が、良いよね…?だって…私なんか………」 主「…そんなこと、言うなよ……」 暁「だって!………○○くんも上城さんが良いんでしょ!?先生みたいに…………」 主「俺は………」 ①……………(ゲームオーバー) ②暁子が良い(正解) ①…………… 正直、よく分からなくなった。 本当に俺はこのまま暁子ちゃんと一緒にい続けて良いのだろうか。 主「……………」 暁「…いいよ、無理…しないで………」 主「………ごめん」 暁「……分かってた、ことだから……」 主「……………」 暁「…ごめん、もう…今日は…帰ってくれるかな…?」 主「え…?」 暁「一人に……なりたいの………」 主「あ…ああ…」 一人になりたい。 それは俺も同じ気持ちだった。 素直に従う。 暁「………大丈夫、明日からは…元通りだよ」 そう呟く彼女を背に教室を飛び出した。 ~~~~~~~~~~~~~~~~ 【朝、教室】 暁「○○くん、おはよう」 主「あ、おはよう」 あれから後、もう彼女の弱い姿を見ることはなかった。 強い強い、出会った当初の彼女に戻っていた。 そしても戻ったのは俺たちの関係もだ。 もう、あの時のような深い関係ではない。 それはまるで1学期に戻ったような感覚。 何も考えずに過ごせる楽しい毎日だれど…どこか虚無感が残る。 もし、あの時俺が別の選択肢を選んでいたらどうなっていたのか。 今ではそれはもう分からない。 これで本当に良かったのかと、引っかかる疑問は出来るだけ見ないようにして………俺はただこの毎日を過ごしていくだけだ。 【ゲームオーバー】 ②暁子が良い 白雪の方良い? 悪い冗談はよせよ…だって、俺は……… 暁「………困らせて、ごめんね…今日のことは忘れて………」 主「…忘れない」 暁「大丈夫!…明日からは………ちゃんと、しっかりした私に戻るから…、だから…………」 主「戻らなくて良いよ」 暁「え…?」 主「戻らなくて良い。このままで…」 暁「なん、で………」 主「…お前さ、何勘違いしてるのかは知らないけど…俺が好きなのは暁子だよ」 暁「……………」 主「しっかり者の暁子じゃなくても、俺は好きだ」 暁「○○くん………」 主「ちょっとぐらい…いや、すごく頼りなくても良い………それでも暁子が良いんだ。俺に、甘えて良いからさ…な?」 暁「……きょうこ…、このままで良いの…?」 またうっすらと涙ぐむ。 主「ああ。だからさ、全部話してみ?何があったか、とか、何を考えてるだとか……話せるとこだけで良いから…な?」 暁「………うん……。あのね……、中学校の時に…青木先生はまだ先生じゃなくって…、きょうこと白雪姫ちゃんの家庭教師だったの………。そのころから、きょうこは先生のことが好きで………」 暁子はゆっくりと口を開き、ぽつりぽつりと話し始める。 …………… ………… ……… 主「……なるほどな…」 話を要約すると、暁子は先生が好きで、先生は白雪が好きだった、と言うことらしい。 とんだ三角関係だ。 暁「白雪姫ちゃんは、きょうこなんかよりも、ずっと大人で…先生も白雪姫ちゃんが好きで……羨ましかった………」 主「…うん……」 暁「だからね、白雪姫ちゃんみたいに…大人になろうと思った………、だからね、頑張ったの…、きょうこ、頑張ったの……」 主「ああ……」 暁「みんなの理想になれるように…、でも………先生は振り向いてくれなかった……」 主「…辛かったな」 暁「つら…辛かった…!でも、でもね…みんなはそんなきょうこが良いって言うの、だからね、だから…そのままでい続けなくちゃいけなかったの……だって、そうでなくちゃ、みんな先生みたいにいなくなっちゃうと思ったの………っだから……」 主「……俺はいなくならないよ」 その言葉に一瞬驚いたように目を見開くと、ぎゅっと俺の手を握ってくる。 暁「…それでね、全部…白雪姫ちゃんが悪いんだって、思うように…なって………先生を取った白雪姫ちゃんが悪いんだって……、本当は私が悪いのに…でも、そうしないと耐えれなくて……っ、それから…ちゃんと白雪姫ちゃんの顔見れなくなって………こんなこと、したくなかったのに………っ、」 主「暁子………」 多分、これは、誰が悪いとかじゃない。 仕方ないんだ。 感情なんて、時折自分の力だけじゃどうしようもできなくなる時がある。 ダメだと分かっていても。 だから、もう過去のことになってしまったそれは、運命の悪戯だったと笑い飛ばしてしまえば良い。 自分で悪いと思って、後悔しているのなら、もうそれ以上彼女を責める必要はない。 主「大丈夫、大丈夫だから……」 ゆっくりと、優しく頭を撫でてやる。 金色の柔らかな髪の毛がフワフワと手に絡んでくる。 暁「…○○、くん……っく、ひっく、ふぇえええええん!!」 また堰を切ったように泣き出した。 俺は彼女が泣き止むのをひたすら待ってやる。 全て泣いて、吐き出してしまえば良い。 …………。 ガンッ!!!!!!! 主「っ!?」 突然の後頭部からの衝撃。 一瞬気を手放しそうになるも、なんとか踏みとどまる。 主「誰だっ!?」 白「…○○くんが、そんな人だったなんて思わなかったです………」 主「し、白雪…?」 白「暁子ちゃんを泣かせる人は私が許しません!!」 暁「は…ゆき、ちゃん………」 そこには仁王立ちした白雪。 …と、手に握られた電動の鉛筆削り……… ズキズキと痛む後頭部。 ……それで殴ったのか…、どうりで痛いはずだ……… …なんて、悠長に考えている暇もなく……… 主「ちょ、白雪!誤解だよ、誤解…落ち着けって……!」 白「五階も六階もありません…!!」 主「そんな古典的なギャグ…!」 白「問答無用です……!!!」 暁「きゃあああ、○○くん…!!」 …………… ………… ……… (間) 白「…ごめんなさいです………」 主「い、いや…、分かってくれれば大丈夫だから………」 10分後、暁子の助力の元なんとか説得し誤解を解くことに成功した俺と、椅子の上にちょこんと正座した白雪。 ………それにしてもまだ後頭部が痛む。 白「暁子ちゃんが泣いてるのがたまたま見えて……そしたら頭に血が上って、こう………あうぅ~、本当にごめんなさいです………」 暁「…でも、どうして、白雪姫ちゃん………」 途端に明るくなる白雪の顔。 白「暁子ちゃん………また、その名前で読んでくれるんですね………」 暁「あ…………」 白「へへへ、嬉しいですー」 暁「でも、きょうこ…白雪姫ちゃんにいっぱい嫌なことしたのに………」 白「…それくらい、なんともないです!白雪は…いつでも、一番暁子ちゃんが大切ですから……」 暁「白雪姫ちゃん………」 やれやれ、どうやらこっちの問題もなんとか解決の兆しが見えてきたようだ。 …そうなれば邪魔者はとっとと退散しますか。 主「…じゃ、俺は帰るわ」 暁「え…○○くん…?」 主「あとは女同士積もる話もあるだろうから、な」 再び鞄を持つと教室を後にする。 主「じゃあな」 暁「○○くん…、ありがとう」 主「どういたしまして」 廊下に、秋特有のほんのり冷たくて渇いた爽やかな風が吹き抜けていく。 どこか心が軽くなった気持ちだった。 【朝、教室】 いつも通りの朝。 なのに今日は何故か随分すっきりとした気分だ。 ―ガラッ 扉を開け教室に入る。 主「おはよう」 暁「あ、○○くん!おはよう」 白「おはようです~」 そうして目に飛び込んできたのは楽しそうにお喋りをする二人の姿。 それを見て、昨日は上手くいったんだと確信する。 暁「あ、それじゃ…白雪姫ちゃん…」 白「うん、また後で、です…!」 まだ、若干の気まずさは残るものの、もうこの二人は大丈夫だろう。 そのうち、時間が解決してくれる。 暁「…あの、ね、○○くん………」 主「うん?」 暁「きょうこ、ね…もう、自分に嘘はつかないことにしたの。すぐに全部は…ってワケにはいかないけど………本当の自分にも、○○くんが好きになってくれた自分に…自身を持っていこうと思うの!」 主「ああ…。ははっ、よく出来ました」 彼女の満面の笑みに思わずこちらも笑みがこぼれた。
https://w.atwiki.jp/ratselhappyroute/pages/68.html
【教室内】 暁「それじゃあ順番にクジを引いていってください!」 教室内に暁子ちゃんの元気な声が響く。 2学期が始まってすぐのLHR。 今日はまず心機一転で席替えからだ。 生徒達は立ち上がり、教壇に用意された箱の中に手を入れ、クジを引いていく。 黒板には日向の丁寧な字で書かれた座席表。 そこに数字がバラバラに分配されている。 うーん…やっぱり一番前にだけはなりたくないな…。 この際席はこのままでも良いんだが………。 羽「俺らも行こうぜ」 主「ん、行くか」 どうせクジなんて運次第なんだから、早く行っても遅く行っても同じだろう。…多分。 人気が引くのを少し待ち、羽生治と一緒に教団のほうへ向かった。 暁「はい、○○くんどうぞ!」 主「お、ありがと」 箱の中に手を入れる。 残りが大分少なくなった箱の中、どれを掴むか悩む。 …が、結局悩んだところでどうにかなるものでもない。 諦めて適当に1枚掴んだ。 羽「お前何番?」 主「ええっと…………お、16番だ。そっちは?」 羽「ん、俺?俺はー………あ、3番…」 黒板の座席表と照らし合わせてみる。 俺の16番は廊下側の後ろから3番目。 うん、まあそんなに悪くはない位置だ。 羽「げっ!」 主「どうした?」 羽「うーわー…マジかよ…」 主「え、何々?もしかして最前か?」 羽「いやさ、それは免れたんだけど…前から2番目。あーもう、勘弁してください!」 主「それはそれはご愁傷様で」 羽「……………ちなみにお前は?」 …なんだろう、この気持ちは。 別に勝ち負けでも何でもないが、不思議と優越感が沸いてくる。 ふっ、…この際だ、思いっきり自慢でもしてやるか。 俺は満面の笑みで答えた。 主「後ろから3番目」 羽「…!!」 主「ま、羽生治くん、2学期いっぱい頑張りたまえ」 羽「うわ、くそ、卑怯だぞ!交換しやがれ、いや、交換してください!!!」 主「いや、卑怯も何もないから。呪うんなら自分の運の悪さを呪うんだな!」 羽「ぐっ……くそっ、何でも良いからそのクジをこっちに渡しやがれ…!」 主「ちょっ、は、離せって…!!」 羽「離さねぇっ…!この命にかけても…!!」 暁「こらそこ!クジの交換と命の無駄使いはダメよ!」 主「ほら、委員長命令だぞ!」 羽「ううっ……」 漸く羽生治のがクジが離れる。 あー…、破かれるかと思った。 暁「クジを引いたら、机を移動させてくださーい!」 その声にクラス中が動く。 主「フッ、それじゃあ達者でな」 羽「ち、ちくしょーーーーー!!!!」 衣「おやおや、大声出して」 驢「可哀相なんだな~」 羽生治の悲痛な叫びが木霊する。 それを聞きつけた衣縫や驢馬山からは同情の声。 うむ…成仏してくれよ。南無三。 ~~~~~ さて、決まった席の位置まで机を移動させるわけだが、結構面倒くさいな…。 普段置き勉しているわけだから、机の中には様々な強化の教科書やらがびっしり。 重いわけだ………。 白「あ、あの、○○くん…!」 ふと、声をかけられ振り向く。 主「お、白雪」 白「○○くん、何番でしたか?」 主「俺?16番だったけど…」 白「じゅ、じゅうろくばん!?あ、あう~…」 突如眉間に皺が寄り、目が潤む。 主「ど、どうしたっ!?」 白「うぅ~…………」 主「し、白雪?」 白「…ぐすっ、○○くんと離れちゃいました…、白雪、28番で窓際なんです…」 主「え?」 白「白雪、また○○くんの隣が良かったです…」 主「あー…」 何だそういうことか。 ホッとしたような、しないような………。 白「ううー…○○くん…」 涙目で訴えてくる白雪。 少し困った、などと思いつつも、そう思ってくれることは素直に嬉しい。 …が、俺がどうのこうのできることでもない。 主「ま、まあさ、そんな深刻な顔しなくても、席がちょっと離れただけで同じクラスなわけだし、これまでとそんなに変わりないって!」 白「でもぉ…」 主「ほら、休み時間とか、またいつでも話し相手になるし…」 白「そう…ですか?」 主「そうそう」 白「…………」 主「…………」 白「……でもぉ」 主「な?」 白「あぅ…はい、です」 主「うん、いつでも来いな?」 白「…はい!」 やっと白雪の顔に笑顔が戻った。 やれやれ……… ホッと胸を撫で下ろす。 白「じゃあ、白雪、○○くんの席まで遊びに行きますね!」 主「ああ、待ってるからな」 白「はいです、ふふ」 …どうやら満足したようだ。 無邪気な笑顔で去っていった。 さて、それじゃあ机の移動、再開しますか! ~~~~~~~~ 主「ここか……」 まずは少し辺りを見渡して確認。 黒板も見やすさ…よし。 それに恐らく先生からは前の人に被ってこちらの様子はあまり見えないだろう。 後ろよりの真ん中…まあ、目立たない位置だからな。 まずまずと言ったところだろうか。 で、問題はと言うと………… ち「よっ、○○!もしかしてこれって運命ってやつぅ!?」 主「お前が隣か!」 ……これである。 ち「くひひっ、もう!そんなに嬉しがらなくたって分かってるってー」 主「…はあ」 垂髪は賑やかだ。 うん、それはとても良いことだと思う。 だけど垂髪は賑やか過ぎるんじゃないか? ああ、賑やか過ぎる! 何事も度を越すのは良くない。 断じて良くないぞ…! …なんたって被害は周りに及ぶんだからな。 蘇る1学期の授業中。 授業中の私語、居眠りなんてのはまだ序の口。 先生の話にツッコミ、落書きで改造された教科書のお偉いさん方… 上げればキリがない。 その所為で先生に目をつけられ、果てはその周りまで…………。 ああ、恐ろしい! それにしても… 主「お前は小学生男子か!」 ち「え!?何、突然!!?」 主「いや、すまん。心の叫びだ」 ち「十分口に出てましたけど」 主「空耳だ、空耳」 ち「て言うか小学生!?○○ってもしやロリ…」 主「だ ま れ。しかも男子って言ったから!」 ち「え、それじゃホ…」 主「一回本気で死ね」 ち「きゃーん、怒られちゃった!」 主「怒られちゃったじゃねえ!…あ、あと授業中絶対に話かけてくんなよ!」 ち「えぇー!?なんでー!!?」 主「なんでもだ」 ち「…あ、分かった!今流行りのツンデレってやつね!」 主「アホか!!」 ち「ねえねえデレは?デレはまだ?」 主「………はあ」 ち「あれれ、ため息ついてどしたの?」 主「お前の所為だ、お前の!」 ダメだ、こいつの相手は体力を使う。 …と言うよりも奪われているような気がしなくもないが。 ち「ね、○○」 主「はいはい、なんですか」 ち「あげる!栄養補給ね」 主「ん?」 緩やかな孤を描いて投げられたそれをキャッチする。 ち「ナイスキャッチ!」 主「…お、チョコか?」 それはコンビニのレジ前でよく見る丁度一口サイズに包装されたチョコレートだった。 ち「あのねー、疲れてるときには甘いものが良いんだって!えっと…イライラにも、だっけ?」 主「ふーん…」 ち「あれれー?お礼が聞こえないぞー?」 主「はいはい、有難うございました」 ち「よくできましたー!」 主「ははっ、子供かよ」 いつにも増して能天気そうな垂髪の声に、自然と笑みがこぼれる。 確かに垂髪は賑やか過ぎるけど、ちゃんと気遣いも出来る良い奴だ。 現に、一緒にバカやったりするのは楽しい。 それに、案外可愛いところもあるし……… 主「……………」 ち「うん?どうかしたー?」 主「…いや、なんでも」 本人に直接言うと、調子に乗るだろうから言わないけど。 俺はチョコの包みを開けると口の中に放り込んだ。 主「お…美味いな」 ち「でしょー?」 主「お前が自慢することか!」 ち「へへへ、だってー!」 暁「…あ、あの、○○くん………」 主「え?」 突然呼ばれ振り返る。 主「暁子ちゃん…どうかした?」 暁「あ、あのね…」 主「うん」 暁「まだ…LHR終わってないんだけど…」 主「え」 周りを見渡せば、こちらに集中しているみんなの視線。 そして目の前には困った表情の暁子ちゃん、呆れ顔の日向、そして……… かすかに青筋を浮かべた先生。 ち「ありゃー」 …前言撤回だ。 ふと前の方ではガッツポーズを浮かべた羽生治の姿が見えた気がした。 【授業中】 静かな教室内に淡々と先生の言葉が響いていく。 その難しげな言葉の羅列は脳で止まることはなく、右耳から左耳へとあっさり通過する。 午後の一番の授業。 ………眠い。 丁度さっきの昼休みで空腹も満たされ、少し遠い窓からは陽気に日がポカポカと照っている。 これで眠くならないはずがない。 緩やかに襲いくる睡魔の波と闘いながら、とりあえず、と黒板に書かれた文字やら図式をノートに書き写していく。 出そうになる欠伸を噛み殺し、ふと隣へと目を向けた。 ……………。 何やら今日は垂髪が大人しい。 下を向いて…居眠りでもしているのか…? 先生が黒板に向かっていることを確認すると、ばれない様に少しだけ顔を傾け覗き込んでみる。 …どうやら寝てはいないようだ。 何やら手がごそごそと動いている。 だが、ノートを取っているワケではない。 その証拠に開かれたノートは白紙のままだし、シャーペンはまだ筆箱から出された形跡がない。 机の上にあるのは無造作に開かれた教科書とノート、それからピンク色の鋏。 (…………鋏?) もちろんこの授業は鋏を使うようなことはしていない。 不思議に思い、より深く覗き込んでみる。 (………?なにしてるんだ…?) 小さな紙で紙縒りを作っているのが確認できた。 よく見れば真っ白なノートは穴だらけで虫食い状態だ。 …ああ、多分あの鋏で切り取ったんだな…………。 多少呆れつつもその一連の作業を横目で見続ける。 眠気でまったく頭に入ってこない授業よりも、この方が幾分か興味をそそられるし。 先ほどの紙縒りは垂髪の手によって丸められ、わっか状態になった。 と、垂髪の手が止まる。 満足そうな笑顔。 (作業は終了したわけか) どうやら完成のようだ。 垂髪は出来上がった紙のわっかを満足そうに見つめている。 で、結局あの物体は一体何なのだろうか… ~~~~~~~~ 【休み時間】 ―キーンコーンカーン 礼「それでは、今日はここまでです」 先生の一言と共に騒がしくなる教室内。 教科書やノートを机の中にしまいつつ、俺は未だに先ほどの授業で垂髪が作っていたものが気になっていた。 ………聞いてみるか。 主「なあ、垂髪」 ち「ん、どしたのー?」 主「さっきさ、授業中作ってたの何?」 ち「え!?見てたの?」 主「ああ、ちらっとな」 ち「いやーん、○○のエッチ!!」 主「…はいはい。で、結局何だったの?」 ち「ふふん、そ・れ・は・ねー…じゃじゃーん!これだよー!」 得意気に掲げられた右手。 おお、蛍光灯で逆境になりながらも神々しく輝いて見えるぜ… …しかしいくら輝いて見えたって、その手にあるのは先ほどの小さな紙のわっか。 ………これって言われてもさっぱり分からん。 だからそれは何なのだと……… ち「うふふ、特別に○○にプレゼントしちゃう!」 主「へ?」 ち「はい、どうぞー」 主「え、ああ………」 ①受け取る(正解) ②受け取らない ①受け取る 主「じゃ、貰っとくわ。サンキュー」 ち「へへへ、どういたしまして!可愛いっしょ?」 主「か…可愛…?」 …ただの紙のワッカを可愛いと言われても……… ち「ね、ね、つけてみてよ!」 主「つける?」 ち「ほらほらー」 主「い、いや、ちょっと待て…!」 ち「ん?なぁに?」 主「………これって、結局何なんだ?」 ち「え?」 その一言を言った瞬間、それまで一人で盛り上がっていた垂髪が、はた、と動きを止めた。 主「だから、これ………」 ち「……………」 主「…………?」 ち「……………」 主「……………」 ………これは、何かまずいことを言った雰囲気か…? ち「…○○」 主「………はい」 ち「…それ、何だか分からずに受け取ったの?」 主「………そうですね」 ち「…何で受け取ったの?」 主「いや、くれるって言うから………」 ち「ひっ…………」 下を向いてプルプルと震える垂髪。 主「う…垂髪…?」 ち「………っどーーーーーい!!!!」 主「ぅわっ!!!」 ち「もうっ!バカバカ!それどっからどう見たって指輪じゃん!!!」 主「…指輪?」 ち「そうよ!」 主「…ああ!」 そう言われてやっと理解した。 この形状、指輪と言われれば確かに指輪だ。 俺はそれを小指にはめてみる。 するりと抜け、ストン、とまるで輪投げの輪のように落ちていった。 ち「…どう?分かった?」 主「ああ、指輪だ、確かに指輪。うん…っていうかはめてみたのは良いけどぶかぶかだぞ」 ち「○○が小指にはめるかだって!…その隣の指とか良いんじゃない?」 主「ん?薬指か?」 そのぶかぶかの指輪を小指から抜き取り、言われるがまま薬指にはめてみる。 主「あ、ぴったりだ」 ち「でしょ?どう、感想は?」 主「うん、だからぴったりだって」 ち「…それだけ?」 主「え、あー………」 感想は?と聞かれても返答に困ってしまう。 本当に何も考えなく貰った物だし、ついさっきまでは指輪と言うこと自体分からなかったし。 多少ぴったりだったことが凄いと思ったくらいで……… 主「えーっと…………」 ち「…………………はぁ、うん。ありがと、もういいよ」 主「え?あ…」 ち「ちさ菜さんの力不足でした!もー、かなり練習したのになあ…」 主「練習?」 ち「そうよ!毎日毎日授業中に…!」 主「阿呆か」 ち「こうなったらもっともっと練習して○○をギャフンと言わせるような指輪、作ってやるんだからねっ!」 主「おー、それは楽しみだ」 ち「うっふふ、○○も首……じゃなくて、指洗って待っときなさいよ!」 主「おう、除菌までして待っとくぜ」 …にしても思ったよりも授業中静かだと思ってたら、毎回こんなことをしてたのか。 ふと、薬指につけた指輪をもう一度見る。 普通に見ればただの紙くずなんだろうけど、不思議とそんな気は起きなかった。 捨てる気にもなれず、俺はそれをそっとポケットの中にしまった。 ②受け取らない 主「え………」 ち「ん?ほらほらー!」 主「いや…そんなゴミ貰っても…」 ち「ゴッ…!?」 垂髪の手に握られたもの。 どう頑張ってみても、ただの紙くずにしか見えない。 主「ゴミはちゃんとゴミ箱にー…」 ち「うっ…○○のバカーっ!!!!」 主「え、あ、おい…!!!」 …垂髪は走り去って行ってしまった。 一体なんだったんだろうか…。
https://w.atwiki.jp/ratselhappyroute/pages/42.html
授業終了のチャイムが鳴り終わり、昼休みが始った。 そのまさに鳴り終わった直後、それは起こった。 主「なに、更衣室のドアが壊れた?」 ち「そう、もうとにかく、酷っい壊れようなんだよー!」 「なんていうんだっけアレ、え~と‥」 「あのほら、ドアの横についてるやつ!」 主「蝶つがい?」 ち「そう、ソレソレ!」 「それの上がさぁ、外れちゃったのよ、ガチャって!」 主「ほう、大変だな」 ち「うんッ!すっっごい、めちゃめちゃ困ってるわけよ!」 「だからさ、ね、〇〇ッ。お・ね・が・い」 主「はい?」 ち「修理してよ♪」 主「さ、メシ食おっと」 ち「ちょちょッ、ちょっと、ホントにお願いだよー!」 主「暇な奴に、頼めばいいじゃん」 ち「だって〇〇以外に暇そうな人、いないんだもん!」 主「…なに?」 あたりを見回す。 見る限り、呑気に弁当を広げる連中が大半である。 主「見ろ、ほとんどの奴が暇そうだぞ」 ち「みんなは、今からご飯でお忙しだよ」 主「それは俺もだっつうのっ」 ち「まあそう言わずにさぁ~、頼むよぉ〇〇~~」 主「どうして、俺じゃなきゃいけないんだよ?」 ち「う~ん、それは……」 主「べつに、羽生治とか、衣縫でもいいじゃねーか」 ち「だ、だって‥‥」 「〇〇が一番、引き受けてくれそうなんだもん」 主「なんでそう思うんだよ?」 ち「なんとなくかなァ?」 主「なんとなくって……」 ち「というのは嘘で、実は、暁子に頼まれたんだよ」 主「暁子ちゃん?」 ち「そ!」 主「なんで俺なんだ?」 ち「さあ……」 「とりあえず、○○くんにお願いしたいって言ってさ」 主「ふーん‥‥」 ち「と、とにかくお願い〇〇、この通りだからさッ!!」 主「すぐに終わりそうか?」 ち「うん、ちゃちゃっとやってくれれば、すぐ!」 主「はぁ‥‥ったく、しょうがねえな。わかったよ」 ち「やってくれるんだね?!」 主「うん」 ち「ぃよっしゃーーッ!!!」 「ありがとう○○~~ッ、やっぱ、頼るべきは君だよ!」 「最高!男前!勇者!神様!優しすぎッ!!」 主「はいはい、わかったから」 ******************************** ち「お~い、連れてきたよ~~」 暁「あっ、ちさ菜!」 校庭の隅に、更衣室が見えてくる。 そしてその前には、暁子ちゃん他数人の女子が、佇んでいた。 暁「ごめんね?わざわざ、こんな所まで」 主「いや」 暁「ちさ菜も、ありがとう。お疲れ様」 ち「なんのこれしき♪」 「それより暁子ッ、約束どおり、例の物頼んだよ!」 暁「うん、あとでね」 ち「わーーい、やったやったーーッ」 「ハンバーグ定食、タダでゲットーー♪」 主「お、お前ッ、俺をダシに使いやがったな?!」 ち「へへッ悪いね~〇〇!」 「人生はずる賢く生きなきゃ、ソンだよソン♪」 主「くっそ~、覚えてろぉ…」 小「あら、○○じゃない」 「まさか、アンタが来るとは思わなかったわ」 鳥「え~ッ、〇〇くんが直してくれるのぉ~ッ?!」 音「あら〇〇さん。ごきげんよう」 小「ちょっと、ほんとに修理できるんでしょうね?」 主「見てから判断しようと思っているが」 小「言っとくけど、女子の全員が迷惑してるんですからね」 「何が何でも、絶対、確実に直しなさいよ!」 鳥「そうだよ、命かけて直してねッ☆☆」 暁「ごめんね‥‥〇〇くん」 「こんな面倒な仕事、引き受けさせちゃって」 主「…ま、いいって。それより、どんな風に壊れたんだって?」 ち「暁子が蹴ったせいで、傾いちゃったのよ!」 鳥「そう☆ガコンッてね!!」 暁「あ、あれは蹴ったんじゃなくてねッ?」 「ほんのちょっと、押したつもりだったのッ!」 鳥「ほんのちょっと?」 ち「にしては、随分と凄かったけどねえッ!勢いが」 音「少々、いやかなり、手荒な扱いでございましたわ」 暁「う‥‥」 小「仕方ないじゃない、そうするしかなかったんだから!」 「両手がふさがってて、足を使わざるを得なかったのよ」 暁「こ、小兎ちゃん‥ッ」 ち「おうおう、暁子の肩を持つ気か?チビのくせに」 小「ち、チビっていうなぁッ!!」 鳥「でもたしかに、手で開けるのは無理あったね」 音「全員分のユニホームを、お持ちになっておりましたものね」 ち「そういや、一気に持って行くんだって言って、聞かなかったんだっけ!」 鳥「つまり、暁子ちゃんの張った意地が原因だね☆」 暁「うぅ‥‥ご、ごめんなさい」 「私ったら、つい意地が出て‥‥」 ち「まあ~良いってことよ。ねッ、みんな!」 音「ええ。なにもそう、心配なさる必要はございませんわ」 小「そうよ!コイツが何としてでも、直すんだから!」 鳥「そうそう☆○○くんが、何とかしてくれるよッ!」 暁「み、みんなぁ‥‥ッ」 主「さてと……」 小「○○、頼んだわよ」 ち「○○、全ての運命は、君に託された」 鳥「○○くん、頑張って」 ……………………… 主「これは…中々、酷い」 開閉部分が、外開きになったまま、右下に傾いている。 見ると、上部の蝶づかいが、根元から外れてしまっているのだった。 暁「直せそう……?」 主「うーん」 小「ちょっと。まさか直せないとか、ほざくんじゃないでしょうね?」 主「いや、まだわからんぞ」 傾いた開閉部分を、隅々まで、確認する。 蝶つがいのとめ具が、緩んでしまっていたようだ。 それでドアの重さに耐え切れず、外れてしまったらしい。 主「ネジが緩んでるみたいだな。これを締めれば、何とかなるかもしれない」 鳥「ホントッ?!直るのッ??」 主「とりあえず、やってみる」 音「〇〇さん。工具箱なら、ここにございましてよ」 主「おう、サンキュ」 ち「○○ッ、大いに頑張ってくれたまえ!」 「それ直せたら、あたしのお弁当もらっていいからね!」 小「できる限り、全力を尽くしなさいよ。いいわね?」 「直せなかったら、タダじゃおかないんだから」 鳥「あんまり期待はしてないけど、頑張って☆」 主「へいへい」 暁「○○くん‥‥‥」 主「うん?」 暁「無理しなくっても、いいからね‥‥‥?」 「もし直せなくても、○○くんの責任じゃないんだから」 「壊したのは私なんだから、責任は全て、私に……」 主「そう悲観すんなって。元々、ドアが古くなってたのが原因だよ」 暁「でも……」 主「大丈夫。必ず直してみせるさ」 暁「○○くん‥‥」 主「よし、んじゃ始めるか」 そうして、さっそくドアの修理をし始める。 ―――キリキリキリ ――キュッ 主「‥‥ようし、と」 最後のネジを締める。 開閉部分の傾きは無くなり、完璧に矯正された。 十分に開け閉めを確かめた上、任務完了とする。 何の変哲もないドアが、そこに出来上がった。 ち「おおぉぉ、直ったァーーーー!」 暁「本当だ!ちゃんと直ったッ!すごーい!!」 小「へえ。まともなドアになってるじゃないの」 鳥「さっすが○○くん!頼りになるうッ☆☆」 主「意外と楽勝だったな」 ち「いやいや、こいつはスゴイ出来栄えだねえ」 小「ここまで短時間で仕上がるとは、正直いって、驚きだわ」 ち「いやぁ、見くびってたあたしがバカだったわ~」 鳥「‥‥あッ、ちょっとねえ、見て見て!!」 「前の時よりも、開きやすくなってるよ?!」 ち「え?‥‥う、うわッ、ほんとだ!」 「うっわッ、すっごく軽い!」 小「本当だわ、なんて軽いのかしら」 音「その上、耳障りな音が少しもないですわ」 鳥「スムーズに開け閉めできるし、音も気にならない!」 小「ちょっと○○、なにこれ。見直したわ」 ち「〇〇、弁当より、あたしをもらっていいよ」 鳥「〇〇くん、お嫁にして☆」 主「おまえらという奴らは………」 ち「よし決めた!○○は今日から、ドアの神様にしよう!!」 鳥「ううん、違うよ、救世主様だよッ!!」 ち「だーーめ!絶対に、ドアの神様なの!!」 鳥「救世主がいーーい!!」 ち「神様!!」 鳥「救世主!!」 音「修理係りに一票」 ち、鳥「……………」 ち「じゃ、〇〇は、どう呼ばれたい??」 主「え?」 鳥「うん、ここはやっぱり、本人が気に入った称号じゃないとねッ☆」 ち「さあさあ○○ッ、どう呼ばれたいのか言ってごらん?」 主「べつに、そんなのどうだっていいが」 ち「正直に、好きな方を答えなよ☆」 鳥「そうそう☆」 ち「あれ?なんかシラけた顔してる」 鳥「あッ、わかった、照れてるんじゃないかなッ☆」 ち「ははーん、相変わらずシャイな男だねえ」 鳥「んもうッ☆照れ屋さんなんだからッ☆☆」 ち「○○、遠慮なんかする必要は、一切ないよ!」 鳥「そうだよ、遠慮なんか不要だよッ☆」 ち「○○は立派な貢献者なんだから、もっと威張ってくれたまえ!」 鳥「そうそう!心行くまで、威張っていいんだよッ☆☆」 主「威張れるようなことなんか、してないぞ。俺は」 鳥「えッ、どうして??」 主「だってただ、頼まれたのを、やっただけだし」 ち「それもそうだけど‥」 「助けてくれたことには、変わりないんだし!」 鳥「そうだよ!これは立派な、偉いことなんだよ?!」 ち「困ってる暁子を、真摯な態度で受け止めようとしたんだもんねッ」 主「俺はただ、義務でやっただけさ」 「それ以外に、深い理由なんてないよ」 暁「………………」 鳥「ふぅ~ん?」 ち「ま、○○がそう言うんなら、それでもいいけどね!」 「じゃ、とりあえず、称号は神に決定ということで」 鳥「ちょっと待ってッ、私それキラーイ!」 小「どうだっていいけど」 「そもそもなんで○○を連れて来たのかを知りたいわ」 ち「え?それはねえ‥」 暁「えッ?‥…あ‥‥」 「なんとなくね、○○くんが直せそうだなって思ったから‥」 小「ふ~ん」 鳥「その勘が見事的中したってことなんだ☆」 ち「暁子って、勘だけは冴えてんだよねえ、いっつも」 暁「んもぅ、だけってどういう意味?」 ち「あははッ、まあまあ」 「とりあえず、一件落着ってことで、安心安心!」 「さ、お腹も減ったことだし、そろそろ教室もどるかッ」 小「そうね。私も、お腹ぺこぺこ」 音「わたくしは、水晶玉の手入れの時間ですわ」 鳥「あッ、待ってよ~☆置いてかないで~」 …………………………… 暁「ねえ、○○くん」 隅の方から、暁子ちゃんがもじもじと、前に出てくる。 暁「さっきは、任せちゃって、ほんとにゴメンね」 主「ああ、いいって」 暁「それでね………」 主「?」 暁「私のこと助けてくれて、どうもありがとう」 主「え?……」 暁「私のために、こんなに一生懸命になってくれるなんて…」 「すごく、嬉しかった」 主「い、いや…だから俺はべつに…」 暁「けど……」 「○○くんは、義務感だけで、やってくれたんだよね」 主「……………」 暁「それじゃあ‥‥」 主「…?」 暁「○○くんの正義は、義務で成り立ってるってことだね」 主「正義が、義務で‥」 暁「…違うかな?」 主「……………」 そんなことを、急に言われても戸惑う。 第一、正義なんてものを、真面目に考えたことがない。 主「‥‥なんで、そんなこと聞くんだ?」 暁「ふふ。なんでだと思う?」 主「……………………」 暁「ねえ、○○くん」 主「ん」 暁「歩きながら、話さない?」 主「え、ああ…‥」 そう言い、校舎に向かい始める。 主「あ、おい」 暁「うん?」 主「あれ、持って行かなくても、いいのか?」 女子全員分のユニホームが入ったかごを、俺が指摘する。 すると暁子ちゃんは、あたかも今思い出したかのようなそぶりで、そちらに注目した。 暁「ふふ、忘れてた。持っていかなくちゃね」 そう言って、かごに歩み寄る。 見たところ、そこまで量は多くないが…… しかし隣を歩いているのに、男である俺が手ぶらなのは、いかがなものか。 主「おい」 暁「ん?」 主「俺、運ぶよ」 暁「え?」 主「かして」 暁「どうして?」 主「…え?」 暁「どうして、運んでくれるの?」 主「どうしてって……」 暁「私が困ってるように見えるからかな」 主「いや、そういうわけじゃないが」 暁「じゃあ、どうして?」 主「どうしてと言われても………」 暁「私、べつに困ってなんかないよ?」 「これくらいの量なら、私一人でも運んでいけるし」 主「そ、そうか」 暁「ねえ、○○くん」 主「?」 暁「どうしていつも、意味もなく親切にするのかな」 主「え…?」 暁「私に、興味があるってわけじゃないよね?」 「それなのに、どうしてそんなに、優しくするの?」 主「そ、それは‥」 暁「私が、哀れに見えるから?」 主「いや、そういうわけじゃ…」 暁「よいしょっと‥」 暁子ちゃんは、かごを重そうにして持ち上げる。 暁「〇〇くん、私は平気だから、先に教室行って」 主「ああ‥‥」 暁子ちゃんは、おぼつかない足取りで、ゆっくり前へと進む。 その後姿は、あまりに頼りなかった。 しかし今の俺には、手助けができない。 主「さて………」 そういうことで、俺は一人、教室へ向かうことにする。 ***************************** キーンコーンカーン 午後の授業が終了し、生徒が一斉に教室を出て行く。 女子「灰塚さーーん」 「これ、焼却炉まで持って行ってくれない~?」 響く声が、教室の隅まで飛んでくる。 気になるのは、その声に反応する相手の方だった。 主「…………………」 自席から凛々しく立ち上がるリヨさんの姿が、視界にうつる。 ゴミ箱の方へ、颯爽と歩み寄っていく。 そのままゴミ箱の前まで行くと、中を確認し始める。 そして、中に敷いてあるポリ袋を、慣れた手つきで持ち上げた。 無表情はいつもと変わらない。 が、どことなく、不服そうにも見える。 ……気のせいか。 それにしても、この光景を見るのは何度目だろう。 昨日も、同じ場面を見たような気がする。 いつだって、放課後になるとこうなのだ。 必ず誰かに、ゴミ捨てを強いられる。 なぜ彼女に押し付けているのか、至って謎だ。 そして、なにより‥‥ 彼女はなぜ抵抗もせず、ただの言いなりになっているのか‥‥ というのが、最大の疑問かもしれない。‥‥ そんなことをボーっと考えている隙に、横に人がやって来ていた。 暁「ねえ、〇〇くん」 主「‥‥おお」 暁「ふふ。‥‥今、お取り込み中かな」 主「そう見えるか?」 暁「ううん、見えない」 主「なにか用か?」 暁「あのね、ちょっと〇〇くんに、お願いがあるんだ」 主「お願い?」 暁「そう。あのね。委員長のお仕事なんだけど」 主「内容は?」 暁「植物の採集。花瓶に挿すためのね」 主「ふぅん」 暁「手伝ってくれないかな?」 主「……まあそれくらいなら、べつにいいけど」 暁「本当ッ?‥じゃ、行こうッ」 元気よく駆け出して行く。 暁「〇〇くんッ、裏庭で待ってるね!」 そう言うと、一足先に教室から姿を消した。 残されて少しの間、その場に佇む。 大きなポリ袋を目の前にしているリヨさんを見ていた。 大きな袋を、片手に軽々と持ち上げる。 もう片方の手には、焼却炉用の大きなトングを持つ。 辛そうなのが、今にも伝わってくる気がした。 そんなリヨさんは、重い足取りで、教室から出て行こうとする。 主「リ‥」 ひと声掛けようと思ったが、思いとどまる。 今の俺の使命は、暁子ちゃんの後を追うことだ。 そっちに行かなくてはならない。 *************************************** 主「で、どれを取ればいいって?」 暁「うんとね、この青い花と、赤い花を見つけて」 「取ったら、このバケツに挿してほしいの」 主「わかった」 暁「ありがとう!○○くんは、本当に頼りになるな」 「じゃ、よろしくね!」 主「ふぅ‥‥やれやれ」 さっそく地面に視線を落とし始める。 静かな裏庭には、俺と暁子ちゃんしか見当たらない…… ‥そう、思っていた。 よって、ふと顔を上げた瞬間、俺は心の中で歓喜した。 そう、二人以外の存在を確認したのである。 影にヒッソリある、焼却炉の前。 スラリと伸びた身長、ブルーの髪の毛、涼しげな表情。 灰塚リヨが、置物のようにして、そこに立っていた。 ゴミ袋にトングを突っ込み、つかんだゴミを、次々と焼却炉の中へ投げ入れる。 その様子は見るからに、面倒くさそう。 たまに袋の中をチラチラ確認しているが、動いているのも視線のみである。 俺は、地面とその様子を交互に見ながら、作業を続ける。 ‥‥と、その時。 暁子ちゃんが、校舎の方に歩いて行く。 どうやら、向こうの方へ取りに行くつもりらしい。 当分、こっちには帰ってきそうにない‥‥かもしれない。 作業を続ける 投げ出す "・作業を続ける ……けど今は、止めた方がいいだろう。 委員長である暁子ちゃんの依頼を、放棄するのはもっての他だ。 ここは一つ我慢して、作業を大人しく続けることにしよう。 というわけで、せめて、様子だけ見守ることにした。 リヨさんは相変わらず、ゴミ袋からゴミを引っ張り上げている。 つかんだゴミは、焼却炉の中へサッと投げ入れる。 モクモクと舞い上がる煙が、少しだけ弱弱しい。 雲になるまでボーっと見入っていると、ふと声を掛けられる。 暁「〇〇くん見て見て!このお花、綺麗じゃないッ?」 主「ん、なんだそれ?」 暁「ホタルブクロ!」 主「へえ。綺麗だな」 暁「ふふッ、これも教室に飾ったら、綺麗かもね??」 主「うん、そうかもな」 暁「よぅしッ、それじゃこのお花、もっと摘んでこようかな!」 主「おう」 暁子ちゃんは、ルンルンでまた向こうへ去っていく。 主「ふぅ、やれやれ‥‥‥」 そしてまた、リヨさんの方を垣間見る。 すると、彼女の方はもう、作業を終えているようだった。 ゴミ袋を小さくまとめ、校舎へと向かい始める。 主「‥‥‥‥‥‥」 追いかけようと思ったが、無理だった。 あまりに歩くのが速い。 しかも、誰も寄せ付けさせないオーラを発していた。 俺はただ、その場に立ち尽くした。 その颯爽と歩き去る後ろ姿を、見つめることしか、できなかった。 "・投げ出す(正解) ‥‥いいや、投げ出してしまおう。 暁子ちゃんには悪いが、俺はそれよりも、行かなくてはならない場所がある。 そう心の中で断言し、俺はそのまま振り切って、焼却炉の方へと向かう。 主「おい、リヨさん」 リ「‥‥!」 「‥〇〇さん。こんにちは」 主「今日も、ゴミか」 リ「はい」 主「毎日、同じ事やってんのか?」 リ「‥‥ええ」 主「嫌気、差さない?」 リ「‥‥さします」 主「だよな……」 リ「ですが‥‥もう、慣れましたので」 主「そうか……」 リ「‥‥‥‥‥」 「‥‥〇〇さん」 主「うん?」 リ「なぜ、こんな所へ」 主「それはだな…」 リ「茨さんの方は、宜しいのですか?」 主「あれ?知ってたのか」 リ「はい。ここから、ずっと見えてましたので」 主「そっか…」 リ「まさか、〇〇さんが来られるとは、思いませんでした」 主「あはは。そう?」 リ「ええ」 主「‥‥あ、あのさ」 リ「はい?」 主「俺はべつに‥‥自ら、手伝ったわけじゃないからな?」 「暁子ちゃんから、手伝ってほしいって頼まれて‥それで‥‥」 リ「…………」 主「その、つまり‥‥ただの義務だったんだ、義務!」 リ「〇〇さん、一体、何が言いたいんですか?」 主「ああ、いや‥‥とりあえず経緯だけでも、と思って」 リ「……………」 「〇〇さんは、いつもどこか、変わっていますね」 主「えッ、それってどういう?」 リ「エスプリがきいている、とでも言いましょうか」 「なんとなく、興味の惹かれるところがあります」 主「そ、それは‥‥‥光栄だ」 リ「……………」 主「……それよりさ」 リ「はい」 主「なんで…いつも、ゴミ捨てを断らない?」 リ「それは‥‥美化委員だからです」 主「けどさ、こんなのって異常だろ?」 リ「‥これは、私への使命です。当然の義務なんです」 主「そうは言ってもなあ‥」 リ「……………」 主「辛くないか?」 リ「はい」 主「本当に?」 リ「本当です」 主「そう、か………」 リ「‥‥‥‥‥‥」 リヨさんは手を休めることなく、焼却炉の中へゴミを投げ入れる。 そしてやがて、ゴミが底をつく。 主「お、完了だな」 リ「ええ。終わったようです」 主「じゃ、教室戻るか」 リ「はい。‥‥」 「‥‥‥‥‥‥‥」 すると、リヨさんが驚いたようにして、一瞬立ち止まる。 主「ん、どうした」 リ「あ……………」 「……いえ。……〇〇さんも、教室へ?」 主「おう」 リ「……そうですか」 ‥‥と、その時。 向こうから、声が響いた。 暁「〇〇くーーーーーん!!」 主「あ」 暁「摘んだお花、こっちに持ってきてねえーー」 主「ギクッ」 リ「‥‥何のお花ですか」 主「花瓶に差す花だ」 リ「……なるほど」 主「やべえな。ここらへんに、いい花咲いてないか?」 リ「‥‥〇〇さん、これなんかいかがでしょうか」 主「お?」 リヨさんは、紫色の花を摘んで俺に差し出した。 主「おお、これでいいや。サンキュ」 俺はリヨさんからそれを受け取ると、暁子ちゃんのところへ向った。 主「これでいいか?」 暁「あ、うん!」 「うわぁ、凄く綺麗な花だね」 主「うん」 暁「あ、それってもしかして、ホタルブクロじゃないかな?」 主「ふぅん?」 暁「”正義”………」 主「え‥‥」 暁「それの花言葉。正義っていうんだよ」 主「へえ、そうなんだ」 暁「ねえ、〇〇くん」 主「うん」 暁「〇〇くんの正義‥‥ちょっとだけ、わかった気がするよ」 主「え?」 暁「それじゃあ、私、お花持って、教室行くね」 そう言って、暁子ちゃんはパタパタと去って行った。 主「‥‥‥‥‥」 リ「茨さん、教室に向かわれたんですか?」 主「ああ」 リ「そうですか」 主「‥‥‥‥」 リ「………………」 主「‥‥‥」 リ「……あの」 主「あ、ああ。俺たちも、行くか」 リ「ええ」 主「‥‥あ」 リ「?」 主「花、ありがとな」 リ「‥‥‥‥‥‥」 「‥‥いえ。お役に立てて、光栄です」 主「うん」 ……………………… 正義、か‥‥――――